
チューナー1つをヨット内にセットした様子 | NOSCでも無線アンテナが付いている艇が見られます。恐らく国際VHFかアマチュア無線、
若しくは漁業無線用かと思います。
この話は無線機のアンテナから発射される電波の電界強度=電波の強さに付いてです。
話の的は、受信点での電界強度を強くするには送信場所、受信場所が一定距離にある
場合、
@無線機の出力を上げること Aアンテナの設置位置を高くすることのどちらが有効
かとのことです。
結論は「無線機の出力を2倍にするよりアンテナの設置位置を2倍に高かくした方が
有効」=電界強度は強くなると言うことです。
検証
受信点の電界強度を求める公式=E = E0 (4Π.H1.H2) / λ.D です。
E0=相対利得db =(7√GP)/ D を 上記公式に代入すれば
E = (88.H1.H2√G.P) /λ .D二乗 となります。
H1=送信位置でのアンテナの高さ G= アンテナの相対利得
H2=受信位置でのアンテナの高さ P= 送信出力
D =H1とH2との距離
λ =周波数の波長
この公式から分かるのは、H1、H2のアンテナの高さの変化では実数値で変わりま
すが、P=出力とG=アンテナの利得の乗算値は√=平方根で変化します。
(√=平方根の説明は省きます)
つまり単純に送信側のアンテナの高さを1メートルより2メートルに高くしたほうが、
送信出力を2倍にするより電界強度は強くなる事が証明されます。
また、H2の受信側のアンテナの位置を高くすることも同様に有効と証明されます。
但し、この理論は送信器で作られた出力=電力が100%アンテナに供給されている
事に基づきます。 |

チューナー1号機をセット | この公式中の「P」は 送信器で作られた電力=出力であり、決してアンテナから発
射される力ではありません。
実際は送受信器とアンテナ、それを繋ぐケーブル(フィーダー)自体の電力ロスも有
りますし、ケーブルの長さや切断の場所によってもインピータンスが狂い100%の電
力をアンテナの給電部に送ることは出来ません。
効率よく電波を発射させるには
@ケーブルやフィーダー自身が持つロス分を軽減すること。
それには、損失の少ないケーブルを使うこと。
5D―2V、8D―2V、10D−2V、或いは低損失のFBタイプの同軸
ケーブル(インイータンス50Ω)を使うこと。
(トランシーバーの出力インピータンスは50Ωが殆ど)
Aアンテナの固有波長を使用する周波数の波長に正しく共振、整合(インピー
タンスΩ)させること。(アンテナアナライザー、ディップメーター、SWR
計の利用、アンテナの長さの調整又はローディングコイル、短縮コンデンサ
ーの設置整合)
Bケーブルのインピータンスを送信器側(50Ω)とアンテナ側(50Ω)に
整合させる事。つまりケーブルの長さは2/λの長さにケーブル(例5D−2
V)の有する短縮率=約67%を掛けた整数倍の長さ(50Ωが確保さ
れる)にすること。
Cこれらをベストマッチさせれば100%近い電力をアンテナに供給できるこ
とになります。 |

チューナー2号機 | 効率の良い電力の供給の確認
使用周波数の波長が送信器からアンテナまでキチンと整合(インピータンス)出来てい
るか否かをVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)=電圧定在波比を以って確認しま
す。普通はVSWR計を使って確認します。
つまり、送信する進行波電力に対して、インピ−タンスの不整合や何らかの理由で発射
されずに反射して戻ってくる電力分があるのか無いのか、またあるならどの位の電力の
反射があるのかを見ます。
VSWR算出の公式は省きますが、VSWRの値が1.0ならば反射は無い、完璧!
大変効率よくアンテナから電波が発射されていると言って良いでしょう。
その測定値が1.5なら 95% =5%の電力ロス
2.0なら 89% =11%の電力ロス
3.0なら 75% =25%の電力ロス
となり100%の電力が発射されないことになります。
つまり10Wの送信出力を持つトランシーバーから電波を発射してもVSWRの値が
3.0ならば7.5Wしか有効発射されていないことになります。
インピータンス整合器の製作
充分なインピータンスの整合が取れずに設置された機器に対するVSWRを下げる方法とし
て、送信器とケーブル又はケーブルとアンテナの間に電気的に「整合=インピータンス
の整合=50Ω」させる機器を挿入させ、整合させます。
それが「チューナー」とか「カップラー」とか「整合器」と呼ばれているものです。
但し、これを使ったら送信側からアンテナ側までの整合が完璧だと言うことではありま
せん。
これを挿入する場所、つまり送信器とケーブルの間に入れた場合は、この間のインピー
タンスの整合は確保されますが、ケーブル側からアンテナへの不整合までは改善されま
せん。
ケーブル側とアンテナ間のインピータンスの整合も取る事が必要ならこの間にも「チュ
ーナー」を挿入し整合させるしかありません。 |

チューナー2号機の部品取り付け | チュナーの製作
私の使用する設備は国際VHFの25Wの無線機、ケーブル(5D−2V)の長さ4~5メ
ーター(任意長)、アンテナはアマチュア無線用の144MHzの5/8λ(1.9メー
ター長)の流用です。
当然のことですが国際VHFは156MHz帯ですから、このアンテナのままなら、こ
の周波数には共振せずVSWRの1.0は確保されません。
そのままの実測ではどんなに調整しても2.0しか確保できませんでした。
しからばと、アンテナの長さを15センチほど短く切断し再度整合性を見ましたが、ヤ
ッパリ数値は落ちません。
色々と悩み調べた結果、このアンテナの下部(給電点)側に144MHzに整合させる
べくコイルとコンデンサーが入っている事が分かりました。しかし此処をばらして改良
することも考えましたが、今度はアンテナの基台の強度に問題をかかえる事にもなり兼
ねず、基本に戻り、アンテナの原型を留めての整合性を確保させる為に「チューナー」
を製作し挿入することにしました。
写真がその「チューナー」です。回路の異なる2台を作成しましたが、実際に取り付け
たのは最初の1号機にしました。理由は「小型」であることです。
これで、VSWRは1.2を確保しています。1.0にも出来そうなのですが冬空でコ
クピットの中も寒いのでこの辺でと妥協したものです。
チュナーの挿入箇所は送信器とケーブルの間ですのでこの間の整合性が取れたというこ
とです。
ケーブルとアンテナ側の整合は此処にVSWR計を入れてみれば分かりますが〜 ま〜
最初の計測で1.2を確保したので止めておきました。 |

チューナー2号機完成! | 機器のポジションは
無線機〜〜VSWR計〜〜チューナー〜〜ケーブル〜〜アンテナ〜〜です。
総論
電界強度を高めるには、トランシーバーの出力を高めるより、アンテナの設置位置を高
くするほうが良いことは分かりました。
次に、VSWRの値を限りなく1.0にしないと、折角アンテナを高くしたり送信出力を高
くしてもロスが発生し、電界強度が弱くなるので、このVSWRをしっかりと下げる事
が大事なことも分かりました。
独り言
このままの装備でVHFを使うか〜先述の結論のようにアンテナをマストトップの高
い位置に設置して、電界強度を高めることにするか〜悩める子羊ですね〜〜雪が解ける
までに決心します。
チューナーの製作に付いては若干のアドバイスも出来るかと思いますので〜やってみよ
うと思われる方はお問い合わせ下さい。
但し、最近そこに使うバリコン(バリアブルコンデンサー)が手に入りにくいので〜、
チューナー回路を決定したらこの部品を確保する事が第一です。
以上 |