GPSを過信してはいけない
        
 
 GPSさえあれば、どんな海域に乗り出しても何とかなると思っていないだろう
か。
 これが大きな間違いだと感じたのは今年のお盆の頃であった。
 風速11m/s 以上の風に吹かれたこの日は波も高くなって来ていた。ローリングに
ピッチングを繰り返す艇の上で佐渡を目指すGPSの画面は常にグルグルと地図が回り、
自分の位置が定まらないのである。
 ハンディのGPSも佐渡の方向が全く定まらずに進行方向が分からなくなってしまっ
た。
 雨雲に視界はさえぎられボ〜っと見えていた佐渡さえ、すっかり見えなくなった
時に大変な事態が発生したとようやく気づいたのである。
 荒れた海で艇は波に叩かれ、瞬時に反対方向を向いていたりする。ゆっくりと衛
星を捕捉し、わずかに移動した位置から東西南北を割り出すGPSの機能はこんな事態
には全く対応しないものだった。

 さて結果としてどうしたか…である。
 昔ながらの磁気コンパスに頼るしかなかったのだ。
 自分の位置も分からない中で考えたこと。
 「地図なら新潟の方向は東で90度。佐渡は反対の270度。その方向に進めばいつか岸
が見えて来るだろう…」これしかなかったのだ。
 日没近くなって随分と北に流されていたが、姫崎灯台の灯りが見えて来た。
 恐ろしい危険と隣り合わせの中で学んだ1つである。